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出雲大社本殿を支えた巨大な柱や多数の銅剣、銅鐸群など日本の美の力を体感。特別展「出雲と大和」が今日から開幕


特別展 出雲と大和の内覧会場の様子


日本最古の正史『日本書紀』が編纂された720年から1300年という記念の今年、東京国立博物館でこれを記念した特別展『出雲と大和』が開幕しました。712年に成立した『古事記』とともに、『日本書紀』には天皇を中心とした国家の成り立ちが書かれています。『日本書紀』の冒頭は国譲り神話で始まります。ここに登場するオオクニヌシは「幽」と記され、人間の能力をこえた祭祀の世界を司る神とされています。また大和の地における天皇については「顕」とされ、現実の世界、政治の世界を司る存在です。出雲大社が祀るオオクニヌシの「幽」と、大和の地にある天皇の「顕」という二つの重要な役割が、古代の出雲と大和には与えられていました。今回の展覧会にはこの「幽」と「顕」を象徴する島根県と奈良県にまつわる国宝・重要文化財を含む約170件もの名品が一堂に会しています。発掘された数々の遺物、その数とスケールに触れると、古の日本に根付いた美の力をあらためて感じさせられます。


第1章

《宇豆柱》重要文化財 鎌倉時代 島根・出雲大社(島根県立古代出雲歴史博物館保管)


会場を入ってすぐに見えるのが、出雲大社の本殿を支えた柱のうちの《宇豆柱》(本殿前面中央に位置する)と《心御柱》(本殿中心に位置する)。平成12年に出雲大社境内の地下1.3メートルから出土されたもので、大杉3本が束ねられて一つの柱となっています。最大径はそれぞれ135㎝と140㎝。これらの大きさからかつての出雲大社本殿がいかに高大なものだったかが想像されます。


《出雲大社境内遺跡出土品のうち 土師質土器 皿・杯・柱状高台付坏》鎌倉時代 島根・出雲大社


第一章ではこの巨大な柱に加え、出雲大社の境内遺跡から出土した皿や杯といった土師質土器などの素朴でやわらかい造形表現、出雲大社に伝来する《秋野鹿蒔絵手箱》(国宝 ※後期展示)の華麗な螺鈿細工、備前刀の最大流派・長船派の実質的な祖として知られる名工・光忠の《太刀 銘 光忠 菊霧紋蒔絵糸巻太刀》(※前期展示)なども見ることができます。



第2章

《荒神谷遺跡出土品 銅剣》国宝 弥生時代 文化庁(島根県立古代出雲歴史博物館保管)


《加茂岩倉遺跡出土品 銅鐸》国宝 文化庁(島根県立古代出雲歴史博物館保管)


左:《絵画土器(鳥葬の人物)》 右:《絵画土器(建物とシカ)》

2点ともに弥生時代、奈良県立橿原考古学研究所附属博物館


第二章は弥生時代の祭祀に用いられた品々です。荒神谷遺跡から昭和59年に出土した358本もの銅剣のうち186本が居並ぶ姿はまさに圧巻。加茂岩倉遺跡から出土した銅鐸に施された伸びやかな文様や、奈良の清水風遺跡から出土した絵画土器に線で描かれた人や鹿の姿もなんとも愛らしいものです。



第3章

《三角縁神獣鏡》重要文化財 古墳時代 文化庁(島根県立古代出雲歴史博物館保管)


《金製垂飾付耳飾》重要文化財 古墳時代 東京国立博物館 新沢千塚一二六号墳出土品 


《金製方形板》重要文化財 古墳時代 東京国立博物館 新沢千塚一二六号墳出土品 


《銀製鍍金空玉》国宝 古墳時代 文化庁(奈良県立橿原考古学研究所附属博物館保管) 藤ノ木古墳出土品


三章では古墳時代の埴輪や副葬品の造形の展開をたどりながらヤマト王権の成立の背景に迫っていきます。《三角縁神獣鏡》(重要文化財)に彫られた銘文には「景初三年」の文字があり、この年は邪馬台国の女王卑弥呼が魏の国に使者を送ったとされる年です。もしかしたらこの鏡は魏から卑弥呼への贈りものなのかもしれません。三角縁神獣鏡のなかでもこちらは最古級の舶載鏡と考えられています。美しい宝飾品の数々もまた見所の一つ。新沢千塚一二六号墳出土品のなかの《金製方形板》や《金製垂飾付耳飾》、藤ノ木古墳出土品の《銀製鍍金空玉》(国宝)などの精緻な細工は目を見張ります。



第4章

《観音菩薩立像》重要文化財 飛鳥時代 島根・鰐淵寺(島根県立古代出雲歴史博物館寄託)


《浮彫伝薬師三尊像》重要文化財 飛鳥〜奈良時代 奈良・石位寺


《牛頭天王坐像》平安時代 島根・鰐淵寺(島根県立古代出雲歴史博物館寄託)


最終の第四章は仏像などを中心とした内容。島根県の鰐淵寺の《観音菩薩立像》の愛らしく同時に凜々しくもある豊かな表情、奈良県の石位寺のレリーフ状に掘り出された《浮彫伝薬師三尊像》の穏やかな佇まい、唐招提寺の四天王像にみられる力強く威厳を感じさせる容貌、そして小さな一木造りの《牛頭天王坐像》の素朴な存在感も心惹かれます。



特別展 出雲と大和 内覧会場の様子


古代日本の歴史を彩る数々の名品。国宝・重要文化財を含む約170件です。ひとつ一つに繊細な細工が施してあったり、丹念に見ていけば、さらに新たな発見があることでしょう。ぜひ、ちょっとお時間を多めにとって、古代日本の豊かな美の世界を堪能してみてはいかがでしょうか。




展覧会Information


会期   2020年1月15日(水)-3月8日(日)[47日間]

     ※前期展示:1月15日~2月9日 後期展示:2月11日~3月8日

会場   東京国立博物館 平成館(上野公園)

開館時間 午前9時30分~午後5時 ※金曜・土曜は午後9時まで開館 ※入館は閉館の30分前まで

休館日  月曜日、2月25日(火)※ただし2月24日(月・休)は開館

お問合せ ハローダイヤル 03-5777-8600

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