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ビアズリーの風刺画の魅力

更新日:3月12日



展覧会場より
展覧会場より

ビアズリー(1872-1898)と言えば、繊細で優美な線を用いて、耽美でエロティシズムに満ちた世界で、今もなお多くの人々を魅了しています。1894年に発表されたオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』のために制作された挿絵シリーズや、トマス・マロリーのアーサー王伝説を基にした書籍の挿絵『アーサー王の死』など、約1000点以上の作品を遺しましたが、じつは25歳の若さで亡くなっています。10年にも満たない画家としての活動期間でしたが、ビアズリーの作品はその後、ファッション業界やポップカルチャーにも大きな影響を与えました。


サロメやアーサー王伝説などに描かれた耽美な女性像や洗練されたデザイン性に目が行きがちなビアズリーですが、もう一つ、彼の才能をあげるとするならば、その風刺画にこめられた鋭い批評家的な目線ではないでしょうか。


1893年、ロンドンでアルフレッド・テニスンによる史劇「ベケット」が初演されました。ビアズリーは『ペル・メル・バジェット』に掲載されたこの戯曲の演劇評のために、あわせて8点の挿絵を描きました。上掲の《盤上を動く王》(1893年、V&A)は、その挿絵のうちの一つです。チェス盤の上できどった感じでステップを踏む王の姿。黒に進むか、白に進むか、はたまた戻るのか。見ていると、どちらも自在に選ぶことができる、どこぞの権力者をあざ笑うかのようなビアズリーの視線も感じられます。


今回の展覧会ではこの他に1880年代半ばから社会主義者として活動を活発化させた画家で、線描の重要性を強調した論文「線の言語」で知られるウォルター・クレイン。ビアズリーはクレインの装飾性や線の描写、構図などから大きな影響を受けますが、その彼を半ばからかうような《ウォルター・クレインの政治的見解》(1893年、V&A)も展示されています。

風刺画を描くには、対象の特徴を的確にとらえるデッサン力が不可欠です。そこに彼一流のユーモアとぴりりと聞いたシニカルな視線があわさったこれらのペン画。もう一つのビアズリーの魅力として、ぜひお見逃し無く。



 

「異端の奇才――ビアズリー」展は、5月11日まで東京の三菱一号館美術館で開催されている。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)との共同企画で、19世紀末に活躍した英国の画家オーブリー・ビアズリー(1872-1898)の生涯と作品を紹介初期から晩年までの挿絵や直筆の素描、彩色ポスター、同時代の装飾品など約220点を展示。代表作として知られる『アーサー王の死』や『サロメ』など、貴重な作品が盛りだくさん。同時代の画家やフランス象徴主義の影響も見ることができる。





異端の奇才――ビアズリー

会場:三菱一号館美術館

会期: 2025年2月15日(土)~5月11日(日)

開館時間: 10:00~18:00(金曜や特定日は20:00まで)

休館日: 月曜日(特定日は開館)

入場料:

• 一般: 2,300円

• 大学生: 1,300円

• 高校生: 1,000円


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